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夏目漱石「夢十夜」の第一夜を徹底解説!百合の花と百年目の愛

蜜柑

……。

純子

……あら!?どうしたの蜜柑ちゃん!珍しく自主的に本なんか読んじゃって!しかもそれは私の大大大好きな、夏目漱石「夢十夜」第一夜じゃないっ!!

蜜柑

だーもう!横でうるせーな!別に、今度の国語の定期テストに出るから読んでるだけだ。

純子

あ、そういえばそうだったわね。ふふ、蜜柑ちゃんたら見かけによらず勉強熱心なんだから。

蜜柑

うるせー!

純子

じゃあ、今日はお勉強の一環として、「夢十夜」の第一夜について徹底的に解説しちゃうわよ!蜜柑ちゃん、これは私の趣味ではなく、あくまで「お勉強」なんですからねっ!ちゃんとついてきてね!

蜜柑

へーへー……。

「夢十夜」第一夜のあらすじ

白百合のイメージ画像

というわけで、今回は文豪・夏目漱石の「夢十夜」の一篇、第一夜について紹介します!

蜜柑たちと同じように、「高校の国語の授業で読んだ!」という人も多いかもしれませんね。

「夢十夜」は、語り手が見た夢について、第一夜から第十夜に分けて綴られている、短編集です。

奇怪な雰囲気のお話が多い「夢十夜」の中でも、第一夜は「唯一のハッピーエンド」とも言われているお話であり、日本語の美しさや幻想的な情景描写を存分に堪能できる一篇となっています!

それでは、気になる第一夜のあらすじをざっくり見てみましょう!

あらすじ

 
 

語り手である「自分」は、布団に横たわった女性の枕元に座っていました。

 

女性は血色もよく、健康そうな外見をしていましたが、彼女は「自分」に向かって「もう死にます」と言います。

 

にわかには信じがたい「自分」でしたが、そんな「自分」に彼女は、「百年待っていてください」と告げました。

 

女性は、自身が死んだ後の処理を「自分」に託すと、「きっと逢いに来ますから」という言葉を残し、この世を去ってしまいます。

 

ひとり残された「自分」は、彼女の言いつけを守り、遺体を土に埋め、墓のそばへ腰かけ、百年が過ぎるのをただ待ちました。

 

一日一日を待って過ごしてみても、一向に百年は訪れません。

 

もしかして自分は彼女に騙されたのでは、と思い始めた頃、石の下から茎が伸びてきて、真っ白な百合の花を咲かせました。

 

その時はじめて「自分」は、「百年はもう来ていたんだな」と悟ったのです。

純子

ここまでが、「夢十夜」第一夜のあらすじよ!




「夢十夜」第一夜の見どころは?

貝のイメージ画像

「夢十夜」第一夜の見どころは、「自分」と女性とを繋ぐ、深い愛の絆です!

蜜柑

愛って……そんな描写あったか?

純子

何を言っているの蜜柑ちゃん!「あったか」どころの騒ぎじゃなくて、もはやそれがないと話が成り立たないレベルじゃない!

まず、語り手である「自分」から女性へ向けられた愛について焦点を当てて考えてみましょう!

「自分」から女性への愛

蜜柑

なくねーか?愛とか、そんなんが分かる部分。

純子

いいえ、大アリよ!たとえば蜜柑ちゃん、私に「100年待っててね!」って言われたら、どうする?

蜜柑

1秒も経たないうちに帰るに決まってんだろ。

純子

うう、ひどいわ……。でも、たいていの人はきっとそうよね。100年なんて現実離れした年数、まじめに受け取る人なんてほとんどいないはずよ。

蜜柑

でも、語り手の男は実際に待ったわけだろ?100年も。

純子

そうなの!それが、「自分」から女性への、何よりの愛の証といえるわね!

以下に、女性が死ぬ間際の、「自分」と女性との会話を引用させていただきます。

「死んだら、埋めて下さい。(略)また逢いに来ますから」
自分は、いつ逢いに来るかねと聞いた。
「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出るでしょう、そうしてまた沈むでしょう。――赤い日が東から西へ、東から西へと落ちて行くうちに、――あなた、待っていられますか」
自分は黙って首肯いた。女は静かな調子を一段張り上げて、
「百年待っていて下さい」と思い切った声で云った。
「百年、私の墓の傍に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」
自分はただ待っていると答えた。

「自分」は、今わの際の女性に、「いつ逢いに来るかね」と訊き、「待っていられますか」と尋ねられれば黙って頷き、百年の歳月を再会の条件にされても、「ただ待っていると答えた」のです。

途方もない月日を重ねても、「自分」もまた、女性と再び逢いたかったのだということが如実に伝わってきますね。

また、物語の最後には、ただ彼女を待ち続ける「自分」の目の前で、白い百合が花を咲かせました。

その百合に、「自分」はこんなことをします。

自分は首を前へ出して冷たい露の滴る、白い花弁に接吻した。

百合にキスをした後、見上げた空には暁の星がたったひとつ、輝いていました。

それを見て、「自分」は「百年はもう来ていたんだな」と気が付いたのです。

蜜柑

いや、男が女に惚れてたってのはなんとなく分かったけど、最後の一文だけ全然分かんねぇ。女、結局来てねーじゃねーか。

純子

もう、蜜柑ちゃんたらニブチンさんねっ!最後、「自分」の目の前で咲いた花こそが、女性だったのよ!

蜜柑

!?

女性から「自分」への愛

そう、女性はなんと、百合の花に姿を変えて、「自分」に再び逢いに来たのですね。

人間という生き物から、花という植物に姿を変えても、きちんと「自分」との約束を守り、再会を果たしてくれたというところが、女性から「自分」への、何よりの愛ではないかなと思います。

蜜柑

いやいや、分かんねーだろ普通。まさか花になって帰ってくるとか思わねーし、そもそもなんでこの花が女だって分かんだよ?

純子

それはね、漱石の表現技法に着目すれば、すぐに分かるわよ!

表現技法、といっても、何も難しいことはありません。

ただ、「女性」と「百合の花」を形容する文章に、それぞれ共通点が見られるのです。

まずは、物語の冒頭、女性が布団で寝ているところの表現から。

女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかな瓜実顔をその中に横たえている。

ここでは、女性の顔を「輪郭の柔らかな瓜実顔」と表現しており、女性の顔の柔らかそうなイメージを訴えています。

続いて、百合の花が開くところを見てみましょう。

すらりと揺らぐ茎の頂に、心持首を傾ぶけていた細長い一輪の蕾が、ふっくらと弁を開いた。

「ふっくらと弁を開いた」とありますね。

ここでは、百合の花びらがとても豊かで、柔らかな感触をしているだろうということを伝えてくれています。

また、女性が死ぬ間際、「自分」が「待っている」と答えたのを確認すると、彼女が涙を流す場面があります

最後、百合の花も、どこからともなく落ちてきた滴を受ける、という場面があり、女性と百合との間で、「涙」「滴」という要素が対応しています

蜜柑

うーーーん……こじつけくさくねえか?これ。表現が似ちまうことなんかよくあるだろ?

純子

あら!まだ疑うのね。それじゃあ、これならどうかしら?蜜柑ちゃんは、なぜ女性が、あらゆる種類のある花の中から、「百合」という姿を取ったのだと思う?

蜜柑

はぁ?知らねーよ、そんなの。

純子

いいから、考えてみて!ヒントは、「百合」という文字にあるわ!ヒントというか、もはや答えね!

蜜柑

……まさか……「百」年目に「合(逢)う」で、「百合」……ってことか?

純子

その通りよ!

そう、だから「自分」は「百合」の花に口付けた時、「百年」がもう来ていたことを悟ったのですね!

百年の歳月をかけ、百合の花に姿を変えてまで、約束通り「自分」に逢いに来てくれた……このことから、女性の「自分」への深い愛がとてもよく伝わってきます

「夢十夜」第一夜のココがエモい!

「ココがエモい!」のイメージ画像

「夢十夜」第一夜のエモポイントは、なんといっても日本語の美しさです!!

純子

第一夜はね、幻想的で儚げで綺麗な文章が本っっっ当に魅力なの!!どんどん見ていきましょう!

蜜柑

鼻息が荒ぇよ。

まずは、女性の身体を表現する描写について!

真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、唇の色は無論赤い。

女はぱっちりと眼を開けた。大きな潤のある眼で、長い睫に包まれた中は、ただ一面に真黒であった。その真黒な眸の奥に、自分の姿が鮮やかに浮かんでいる。
自分は透き徹るほど深く見えるこの黒眼の色沢を眺めて、これでも死ぬのかと思った。

純子

真っ白な頬、血色のよい肌、大きくてうるうるとした瞳……。これだけで女性がものすごく美人だということが分かるし、表現の装飾に使う言葉のセンスが、やっぱり普通の人とは違うわよね!さすが文豪だわ。

また、女性が涙を流す場面の文章も、本当に美しくて絶品なのです……!

黒い眸のなかに鮮やかに見えた自分の姿が、ぼうっと崩れて来た。静かな水が動いて写る影を乱したように、流れ出したと思ったら、女の眼がぱちりと閉じた。長い睫の間から涙が頬へ垂れた。

「静かな水が動いて写る影を乱したように」……なんて、そうそう書ける表現ではありません。

一見難しいことを言っているように見えても、文章の通りに想像してみると、その光景がすぐイメージできませんか?

この「易しい」と「難しい」の絶妙な塩梅を持つ筆が、漱石の大きな魅力だなと思います。

女性が亡くなった後、彼女の言いつけ通り、真珠貝で穴を掘り、彼女の亡骸を埋める場面についても見てみましょう!

真珠貝は大きな滑らかな縁の鋭い貝であった。土をすくうたびに、貝の裏に月の光が差してきらきらした。湿った土の匂いもした。穴はしばらくして掘れた。女をその中に入れた。そうして柔らかい土を、上からそっと掛けた。掛けるたびに真珠貝の裏に月の光が差した。

純子

「遺体を埋める」という、本来なら陰鬱極まりない場面なのだけれど……。

蜜柑

なんか、そんな感じがしねーな……。

純子

そうね!土を掘るのに、スコップじゃなくて「真珠貝」を使っているところなんか、すごく幻想的よね。貝の裏に月の光が差してキラキラするところも、想像するだけでうっとりしてしまうような美しさがあるの。

「夢十夜」の第一夜は、終始このような感じで、キラキラと綺麗な言葉で飾り立てられた文章で構成されています。

純子

すごく短いお話だから、気軽に読めるのも魅力的なの!「あ~日本語の美しい文章を読みたいな~」って人は、ぜひぜひ一読してみてね!まるで本当に夢の中にいるような感覚を味わえる、不思議な作品よ。

蜜柑

(コイツ、本のセールスしてる時が一番イキイキしてんな……)

まとめ

以上、夏目漱石の「夢十夜」第一夜の紹介でした!

ぜひぜひ皆さまも、漱石が操る美しい日本語に魅了されながら、夢の世界を旅されてみてくださいね。

当ブログでは「夢十夜」第一夜の他に、第三夜も紹介しておりますので、こちらもよろしければぜひご覧になってみてください!

夏目漱石「夢十夜」の第三夜を徹底解説!忘れていた罪と子供の正体

純子

どう?蜜柑ちゃん!これできっと国語のテストはバッチリね!!

蜜柑

あーはいはい、そーだな。

純子

棒読みなんてひどいわ!出題範囲を抑えつつ、分かりやすく要点をまとめたつもりだったのに……。

蜜柑

ぐっ……。まぁ、その、なんだ……。役に立たなかった、こともない。……と、思う。

純子

え!?それってつまり、どういうこと?訳すと、「めちゃめちゃ役に立ったよ!ありがとう!」ってこと!?

蜜柑

うるせー!そこまで言ってねーだろ!!

純子

少しでも役に立てたのならよかったわ!蜜柑ちゃん、国語のお勉強は、これからも一緒にやっていきましょうね!

蜜柑

(なんで……なんでコイツにはペースを乱されちまうんだ……くそ……!!)

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