今回は、中原中也の「湖上」という詩について紹介させていただきます!
メルヘンで幻想的な雰囲気の詩を書く中也ですが、中でも「湖上」は特にロマンティックな色が強い作品で、読んでいるとこちらまでうっとりとした気持ちにさせられてしまいます。
純子
蜜柑
「湖上」ってどんな詩?
それでは、さっそく「湖上」の本文を読んでみましょう!
ぜひ、情景を頭の中で思い浮かべながら読んでみてくださいね。
ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう。
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。沖に出たらば暗いでせう、
櫂から滴垂る水の音は
昵懇(ちか)しいものに聞こえませう、
――あなたの言葉の杜切れ間を。月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るでせう、
われら接唇(くちづけ)する時に
月は頭上にあるでせう。あなたはなほも、語るでせう、
よしないことや拗言(すねごと)や、
洩らさず私は聴くでせう、
――けれど漕ぐ手はやめないで。ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう、
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。
以上が「湖上」の全文です!
純子
「湖上」のココがエモい!
「湖上」はなんといっても、どの一文からも薫り立つ雰囲気の良さが最高のエモポイントです!
出だしの、「ポッカリ月が出ましたら、舟を浮べて出掛けませう」という語り出しから、あっという間に中也が作り出す、幻想的でロマンティックな世界へと誘われてしまいますね。
続く、「波はヒタヒタ打つでせう、風も少しはあるでせう」という文章からは、夜の湖の上という、静かで密やかな雰囲気が演出されています。
純子
蜜柑
また、舟の上で恋人の言葉が途切れた際に、不意に滴る水の音までなんだか親しみが感じられる……という一文からは、語り手と恋人の仲がとても深いものであるということを窺い知ることができます。
「湖上」最大のエモポイントは、なんといっても次のブロックですね!
月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るでせう、
われら接唇(くちづけ)する時に
月は頭上にあるでせう。
純子
蜜柑
純子
そう、ここで注目したいのは、「月の表現方法」ですね!
湖上で語らう恋人たちの声に、月が「聴き耳」を立て、どんな話をしているか、どんなふうに愛を囁き合っているかをもっとよく聞くために、月ったら「すこしは降りても」来ちゃうんですよね~。おちゃめなお月さまです!
そんな月を、当然ながら気に留める風情もなく、そっと唇を合わせる恋人たちの自然な姿にも、なんだかキュンとしてしまいますね。
純子
蜜柑
純子
最後のブロックは、冒頭のブロックの繰り返しとなっています。
この構成、なんだかまるで歌の歌詞みたいですよね。サビを最後にもう一回、のような。
中原中也の詩はわりとどれもそうなのですが、全体のテンポがものすごくよいのが印象的ですよね!
「湖上」も最初から最後まで、文章が一定のリズムで刻まれていて、全体的に韻を踏んでいるため、読んでいてとても小気味がよいのです。
純子
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まとめ
以上、中原中也の「湖上」の紹介でした!
中原中也は他にも、雰囲気の素敵な詩をたーーくさん書いているので、今後もいろいろな作品を解説してまいりますね!
純子
蜜柑
純子
蜜柑