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宮西達也「おまえ うまそうだな」を解説!血の繋がらない恐竜の親子が育んだ絆

今回は、男性の絵本作家・宮西達也さんが書かれた、「おまえ うまそうだな」という絵本について紹介します!

蜜柑

ずいぶん直球なタイトルだな……。猫がネズミを狙う話とか、そういうのか?

純子

いいえ!「おまえ うまそうだな」は、血の繋がらない恐竜の親子を描いた物語なの!

蜜柑

は、はぁ?恐竜?しかも、血の繋がらない親子??

純子

これがもう、とっっっても泣ける絵本だって有名なのよ!ひとたび読めば、蜜柑ちゃんだってバケツが必要になるくらい泣いちゃうこと間違いなしよ!

蜜柑

(それはさすがに言い過ぎだと思うが、でもコイツが勧めてくる絵本って結構マジで泣けるから厄介なんだよな……)

「おまえ うまそうだな」のあらすじ

恐竜のイメージ画像

それではさっそく、「おまえ うまそうだな」のあらすじを見ていきましょう!

あらすじ

 
 

昔々、広い荒野で、たったひとりで卵から孵ったアンキロサウルスの赤ちゃんがいました。

 

そこに、獰猛なティラノサウルスがよだれを垂らし、「おまえ うまそうだな」とアンキロサウルスに近づきます。

 

すると、なんとアンキロサウルスは、ティラノサウルスの向かって「お父さん!」と声を上げました。

 

面食らうティラノサウルスに、アンキロサウルスは「ぼくの名前、ウマソウなんでしょ?ぼくの名前を知ってるってことは、ぼくのお父さんだ!」と笑いました。

 

このひょんな勘違いから、ティラノサウルスとアンキロサウルス・ウマソウの生活が始まります。

 

「ぼくも早くお父さんみたいになりたい!」と目を輝かせるウマソウに戸惑いながらも、ティラノサウルスは「父」として、ウマソウにこの荒野を生き抜く術を教えて過ごしました。

 

しかし、ティラノサウルスである自分と、アンキロサウルスであるウマソウは、やはり一緒にはいられない、と苦悩するティラノサウルス。
 

ある日、とうとうウマソウに別れを切り出します。

 

「お父さんと離れるのは嫌だ!」と泣きじゃくるウマソウに、ティラノサウルスは「じゃあ、あの山のふもとまで競争だ。ウマソウが勝ったら、これからも一緒にいよう」と提案。

 

ウマソウは涙をぬぐいながら、「お父さんとずっと一緒にいるんだ!」という想いだけで、一心に山のふもとを目指しました。

 

懸命に駆けていくウマソウの背中を見送りながら、ティラノサウルスはウマソウからもらった赤い実をかじりつつ、「さようなら、ウマソウ」と呟き、一筋の涙を流しました。

蜜柑

な、なんだよこの話!想像以上に辛ぇ……!!

純子

うう、蜜柑ちゃんもおめめがうるうるしてるじゃない。「おまえ うまそうだな」は、タイトルの面白さとは裏腹に、親が子を、子が親を想う切ない気持ちがぎゅっと詰め込まれた、素敵なお話なの……。




「おまえ うまそうだな」の見どころは?

恐竜のイメージ画像

「おまえ うまそうだな」の見どころは、ウマソウに慕われるティラノサウルスが、戸惑いながらも「父」としての役割を懸命に果たそうとするところです!

蜜柑

まぁ、父っつっても本当の親父じゃねーんだろ?ティラノサウルスとアンキロサウルスだし。

純子

そこがいいのよ!種族を超えて結ばれる親子の絆に、読み手はグッときてしまうの。また、ティラノサウルスの不器用さもかわいいのよね~!

ティラノサウルスは、いずれ独り立ちするウマソウのために、食糧の調達方法やしっぽの使い方、敵との戦い方を丁寧に教えていきます。

ある日、ウマソウが外敵に食べられてしまいそうになった時、ティラノサウルスは身を挺してウマソウをかばい、敵に首を噛まれてしまいます

蜜柑

よ、よく生きてたな。ティラノサウルス。

純子

彼は強いもの!はじめは「うまそうだな」なんて言って食べてしまおうとしていたウマソウを、自分がそんな傷を負ってまで守ったのだから、一緒に過ごしていくうちに、ティラノサウルスの父性がどんどん育まれていったのでしょうね。

また、ティラノサウルスから教えてもらった方法で、ウマソウが食糧を調達してくる場面があります。

しかし、ウマソウが採ってきたのは、赤い木の実

肉食であるティラノサウルスは、草食であるアンキロサウルスのウマソウとは食べるものが異なります。当然、普段のティラノサウルスは木の実などは食べません

純子

でも!ティラノサウルスはウマソウの気持ちを思いやって、「ありがとう」と言って木の実を食べてあげるの!こういう気遣いとか、ウマソウと出会う前までだったら絶対持ち合わせていないのよね。

蜜柑

ある意味、ティラノサウルスもウマソウのおかげで成長できてる、ってことだな。面倒見てるつもりが見られてる、みてーな……。

純子

その通り!まさに、私と蜜柑ちゃんみたいな関係ねっ!

蜜柑

どこがだよ!!

「おまえ うまそうだな」のココがエモい!

「ココがエモい!」のイメージ画像

「おまえ うまそうだな」のエモポイントは、もちろんラストのティラノサウルスとウマソウの別れの場面です!

蜜柑

にしても、ティラノサウルスはなんだっていきなりウマソウに別れを切り出したんだよ?

純子

ウマソウが無事に荒野を生き抜くための知恵をすべて伝えきったから、というところが大きいわね。

蜜柑

だからって、別にほっぽる必要はねーんじゃねーの?大きくなったって一緒にいりゃいいのによ。

純子

これは私の想像だけど……もしかしたら、ティラノサウルスは怖かったんじゃないかしら。ウマソウが大きくなった時、自分たちが血の繋がらない親子だと気付いてしまうことが……。

別離を切り出すティラノサウルスに、ウマソウは泣きじゃくって拒否します。

しかし、ティラノサウルスも譲る気はありません。

とはいえ、このまま押し問答を続けていても、ウマソウとて折れないでしょう。

そこでティラノサウルスは、「あの山のふもとまで競争だ。ウマソウが勝ったら、これからも一緒にいてやろう」と提案するのです。

蜜柑

けど、ハナからそのつもりはねーんだろ?

純子

その通りよ。純粋なウマソウはティラノサウルスの言葉を信じて懸命に走るのだけど、ティラノサウルスはもちろん追いかけたりしないわ。そしてこのまま、ウマソウとティラノサウルスは離れ離れになってしまったの……。

「お父さんとこれからも一緒にいたい!」という一心で必死に走るウマソウと、その背中を涙ながらに見送るティラノサウルスの姿は必見です。

ウマソウの一途さ、純粋さ、ティラノサウルスの「父」としての思いやり、けれどどうしても生まれる、別離に対する悲しみの感情に、心を大きく揺さぶられてしまいます。

蜜柑

けど、ティラノサウルスもやっぱ薄情だよな。教えることは全部教えたからって、いきなり突き放すとか……。

純子

そうね。読者としては、「これからウマソウはどうなってしまうのか?」というところが非常に気になるポイントなのだけれど……。なんと、最後に少しだけ救いの描写があるの!

蜜柑

な、なんだよ?

純子

実は、ウマソウが駆けて行った山のふもとには、ウマソウの本当のご両親と思われるアンキロサウルスたちの姿が描かれているのよ!

蜜柑

!?

そう、「おまえ うまそうだな」という絵本は最後、ティラノサウルスと別れたウマソウが、本当の両親に会えたことを示唆する描写で終わっています

別れの場面だけを見ると、「ウマソウはこれからひとり、孤独に生きていくことになるのでは?」と心配になりますが、本当の両親に会えたのだとすると、少しだけ救いのある終わり方になっているな、と安心できますね。

蜜柑

けど、ティラノサウルスは結局ひとりぼっちってことなんだよな……。

純子

そうね……ウマソウと出会う前の生活に戻っただけ、とはいえ、ウマソウと一緒に過ごした思い出は、きっとこれからもティラノサウルスの記憶から消えることはないでしょうね……。

ラストに、ティラノサウルスの物悲しさ、切なさが克明に描かれている点も、「おまえ うまそうだな」の見どころポイントとなっています。

まとめ

以上、宮西達也さん作「おまえ うまそうだな」の紹介でした!

このお話は絵本という形態をとっていますが、子どもよりも大人が読むほうが、きっと心に残る何かを得られることと思います。

息子さんのいるお父さんはもちろん、お子さんを持つお母さん、お父さん方はぜひ一度、読んでみてください!

蜜柑

………………。

純子

蜜柑ちゃん、大丈夫?案の定、目が真っ赤で信じられないくらいうるうるしているけれど。

蜜柑

うるせーっ!お前はなんだってこう、泣ける話ばっか紹介すんだよ!?いい加減にしろよ!!

純子

ご、ごめんなさい。でも嬉しいわ!こうして絵本に触れることで、蜜柑ちゃんの感受性が日々豊かになっていくのね♪

蜜柑

ガキ扱いすんじゃねー!今度はもっと、泣けない話にしろよな!

純子

(蜜柑ちゃん、最初の頃に比べると素直になったわよね……♪)

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