– 水曜日の放課後 図書室 –
蜜柑
はぁ~。ったく、なんであたしが図書委員なんか……。確か、隣のクラスのヤツと2人で当番するんだったな……。
蜜柑
(カウンターん中座ってる……アイツか?)
???
くすくす、くすくす……♪
蜜柑
(ひ、1人で本読みながら笑ってやがる……明らかにやべーヤツ……。まぁいいや、コイツに押し付けてとっとと帰るか)
蜜柑
おい。
???
……え?私?
蜜柑
他に誰がいんだよ。お前、今日の図書当番だろ?
???
そうだけど……あっ!もしかしてあなたが、もう1人の当番さん?
蜜柑
まーな。でも、あたしはめんどくせーからもう帰―――……。
純子
はじめまして!私、1年A組の姫宮 純子よ。
蜜柑
聞けよ人の話!
純子
あなたのお名前は?クラスはどこなの?
蜜柑
いや、だから―――……!
純子
あっ、そういえばあなた、合同体育で見かけたような気がするわ!もしかして、B組の子?そしたら、うちのクラスと体育いっしょだものね!
蜜柑
(こいつやべぇ、全然人の話聞かねぇ……)
純子
で、お名前は、なんていうの?
蜜柑
………………芹沢、蜜柑。
純子
えーーーーーっ!?あなた、『蜜柑』ってお名前なの!?
蜜柑
な、なんだよ急に!でけー声出すな!!
純子
あ、ごめんなさい。今ね、ちょうど芥川龍之介の『蜜柑』ってお話を読んでいたところだったから、つい。
蜜柑
み、『蜜柑』?そんな話あんのかよ。
純子
あら、知らないのね!だったら私が教えてあげる!そうだわ、一緒に当番なんだし、これからちょっと芥川龍之介の『蜜柑』についてみっちり語り合いましょうよ!
蜜柑
は、はぁ!?やだよそんなの、あたしはもう帰んだかんな!
純子
あら、当番をサボったらいけないわ。さ、さ、ここに座って!一緒に文学の旅に出ましょう、蜜柑ちゃん!
蜜柑
出ねーよんな旅!!つーかさりげなく名前呼びしてんじゃねー!!
こうして蜜柑は、毎週水曜日の放課後、純子の文学語りに付き合わされるはめになるのでした。
みっちり語る!